top of page
  • 執筆者の写真Dr. K. Shibata

岐路に立つ公共経営:地方自治体と市民の役割

更新日:6 日前

市民の生活に直接的な影響を及ぼす市町村の役割。しかし、多くの日本人はその実態を知らない。



急騰する介護保険料


今月、住んでいる市の財政の説明会に初めて参加した。きっかけは、様々なサービスが削減されるにもかかわらず、保険料などが値上げされるらしいと聞いたから。例えば、訪問介護の基本報酬は引き下げなのに、介護保険料は14.3%値上げされるし、国民健康保険料も3.3%増だ。そして、今後も、さらなる値上げが予想されている。ただ、これは自分の住んでいる自治体だけでない。


介護保険料の引き上げ 続々 月額6500円が半数 74自治体調査


介護保険料は、自治体間でかなりの開きがある。全国的には保険料が高い地域と低い地域では約6000円近く差があるそうだ。市町村別で最も金額が高いのは大阪市の9,249円であり、金額が最も安いのは東京都小笠原村の3,374円、といった具合だ。


介護保険料改定 自治体間で約6000円の差も あなたの住む街は? | NHK


介護保険料の基準額が全国1位の大阪市でも、介護保険制度が導入された平成12年度は3,381円だった。24年で保険料が3倍近くに上昇したことになる。その理由として、大阪市の担当者は次のように回答したという。

「1人暮らしの高齢者が多いことが要介護認定率の高さやサービス利用の多さにつながっている。また所得が低い人の割合が多いことも介護保険料の基準額が上がる要因の一つ。大阪市は世帯全員が市民税非課税の人が49.3%と、全国平均の1.5倍近くになっています。保険財政を維持するためには基準額を高くせざるをえない」

NHK


高齢化率が上がると、市民税非課税世帯の率はさらに上昇する。一方、大阪市内で働いている労働者で市内に住んでいる人はそう多くない。大阪勤務のうち、かなりの割合の人が近隣の府県から大阪まで通勤しているからだ。


逼迫する自治体の財政、低下する公共サービス


それでは、その周辺の地域はどうか。今回、自分が居住する市の首長が説明する「財政構造改革基本方針」に関する市政報告会に参加した。90分間の市政報告会が開かれることを、たまたま市の広報紙で見つけた。最初の30分は、配布資料をもとに財政の状況に関する市長の説明があり、残り60分は参加者の質問に市長が答える構成だった。オンラインと会場参加があり、既定の時間を超えても、市長は市民の質問に回答していたし、この試み自体には市長の誠意が感じられた。


一方、自分もこれまであまり関心を払ってこなかったけれど、配布された市の財政状況は深刻だった。関西で「住みたい街」の上位に常にランクされ、若いファミリー層も多い都市なのに、令和4年度の収支が42億円を超える赤字という事実に驚いてしまった。赤字を解消するため、待機児童も少なくない地域にもかかわらず、保育所と幼稚園が統合され、しかも数が減らされる。市政報告会の会場にはこども連れのお母さんも来ていて、市長に怒りをぶつけていた。


そして、とどめは市の人件費を削減するため、公共サービスの質を落とす、といったもの。例としては、市役所の閉庁時間を30分早める、掃除の頻度や修繕・管理費を減らすため、公園のトイレを閉鎖する、といった内容だった。職員の人員配置を見直す、といったものもあった。参加者の中から、能登地域の地震のように、災害時に最低限の職員で対処ができるのか、という不安の声が上がった。また、公務員の非正規化が問題視されている昨今、この現状は、時代に逆行しているとも思えた。


一方、市政報告会では、市が巨額の赤字削減の知恵を出してもらうために外部の有名コンサル会社に委託していたことにも疑義が呈された、なぜなら、彼らの提案は、市の職員や市民が協働すれば、出てくるようなものだったからだ。しかし、その会社には高額な報酬が支払われており、市長はその件に関する「妥当性」に関しても追及されていた。


[解説と設問を発表]コンサルティング産業と政府・企業の危うい関係性を検証する【英語で学ぶ大人の社会科】第76回 5/19(日)20時@オンライン|Global Agenda 


人口減少と都市計画


また、近年減少に転じたわが市の人口減少を人口が増加している明石市と比較された市長は、「明石市は交通アクセスが良い地域にファミリー向けの住宅などを建てる土地があった」と返答していたのも印象的だった。新築住宅がないと人口が増えない、という日本人の意識(新築崇拝)が、わが国の空き家の増加にも繋がっていると考えさせられた。わが国でもリノベーションが注目されているとはいえ、欧米の都市計画には無い都市の「スクラップ&ビルド」の発想を変えていかないと、今後の都市経営は難しいのではないだろうか


一見豊かに見える、わが街でもこれなのだから、他の地方自治体はどうなっているのか、気になってしまう1日だった。一方、これまで、住んでいる街のニュースや財政に関して、それほど注意を払っていなかった自分の現状を反省したし、会場に来ていた市民の方々の意見にも大いに触発された。こういう機会があったら、また参加したいし、もっといろんな人がこのような会合に参加すべきだとも思った。自分の生活に最も近い地方自治体の政策の実態を知れば、もっと政治に関心を持ち、現状を変える一歩になるのではないだろうか。


この記事の内容に関心のある方は以下のニュースレター@Substackに登録していただくと案内が届きます。


【英語で学ぶ現代社会】を無料ニュースレター@Substackで購読しませんか?


【補足】ふるさと納税


「住みたいまち」トップランクなのに赤字が数十億円もあるわが街。要因の一つとして「ふるさと納税」による他自治体への税金の流出が挙げられていた。しかし、日本経済新聞の報道によると、「ふるさと納税」制度導入のために、地方自治体が負担する返礼品の調達、配送、広告料や仲介サイト手数料などの経費がそれによる収入の半分を占めている。この制度の見直しは必須のような気がした。


閲覧数:8回0件のコメント

コメント


bottom of page