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  • 執筆者の写真Dr. K. Shibata

植民地、奴隷制度とグローバル資本主義~パレスチナ紛争から考える

国際紛争とグローバル資本主義

英国の大学院で勉強していた2000年代に、英語圏の研究者の間で頻繁に取り上げられていた用語「Postcolonialism」。当時は、自分の研究に直接的には関係が薄い、と判断し、その概念について、深く学ぶことはありませんでした。


しかし、先日、新著「Slavery, Capitalism and the Industrial Revolution(奴隷制度、資本主義、産業革命)」の紹介文を目にした直後、ガザ地区でハマスとイスラエルの衝突が激化しています。パレスチナの紛争を自分事として捉えるためには、植民地の搾取の歴史と資本主義の関係性、また国際政治がそれにどう関与してきたかを検証しなければならないと思いました。緊迫した国際情勢が続くなか、改めてこの概念について理解を深めるために、この研究は、とても重要だと思います。事実、発表されて以降、多くの研究機関や研究者が書評などで取り上げいる話題の書籍です。


Slavery, Capitalism and the Industrial Revolution Maxine Berg, Pat Hudson, 2023



以下、本の紹介文の意訳です。

「奴隷制における英国の役割を認識することは、単に銅像を倒すということではない。私たちは、奴隷制度が西洋の 資本主義 と切っても切れない関係にあること、そして私たちの多くが 奴隷制度 の恩恵を受け続けていることを、早急に理解する必要がある。(Acknowledging Britain’s role in slavery is not just about toppling statues. We urgently need to understand slavery’s inextricable links with Western capitalism and how many of us continue to benefit from slavery.)」

Polity



まだ、書籍は読んでいませんが、現代のグローバル資本主義の起源は帝国主義です。15世紀から20世紀にかけて、西欧列強国は、近代化を終えていなかった国々を、次々と武力により支配し、自国の植民地としてきました。その最大の目的は、被支配国の物的及び人的資源の略奪です。後者の最も悲惨な形が奴隷制度です。2020年The Black Lives Matter (BLM) movementで、国内での奴隷制度を最後まで維持していた米国が、その発信地となったのは偶然ではありません。


奴隷制度が廃止され、植民地が事実上消滅したた現代でさえ、その遺産は簡単に消え去ることはありません。旧植民地はグローバル資本主義での安価な労働力の供給先として、現代においても機能しています。奴隷貿易を始めたのは欧州諸国であり、これが、現代の資本主義のベースになっています。それゆえに、「搾取」が、資本主義の文化と相性が良いのも頷けます。


BLMの抗議運動は発信地の米国だけでなく、世界中に拡散しました。英国ブリストル市で奴隷貿易により財を成した人物の銅像が抗議活動中に破壊された事実は、過去と現在を繋ぐ象徴的な出来事です。先進国内での人種差別問題や移民政策の運用の点で、植民地の階級構造は、そのまま資本主義内での搾取の構造と不可分のように見えるからです。


BLM protesters topple statue of Bristol slave trader Edward Colston


以下の「Slavery, Capitalism and the Industrial Revolution」の書評は、このリンクにも言及しているようです。


Slavery and the British Economy: A New Book A reviews by The Economic History Society, June 19, 2023


また、今年(2023年)10月にハマスがイスラエルの一般市民を襲ったことから、激化したパレスチナ紛争も、産業革命により、20世紀にその獲得が必須となった石油資源の利権をめぐる欧米諸国の中東への政治介入がその発端です。映画「アラビアのロレンス」で描かれた、英国の陰謀がなければ、イスラエルの建国は困難だったことでしょう。


アラビアのロレンス


また、20世紀の資本主義は石油という新しいエネルギー源を得ずに、今日の発展はありませんでした。その石油資源をコントロールしてきたのが、イスラエルと強い結びつきを持つ主にユダヤ系の米国財閥です。


アメリカの経済支配者たち – 集英社新書


米国が、今回のパレスチナの紛争で、ここまでイスラエルを支援するのも、この歴史とユダヤ系米国財閥がグローバル経済で築いてきた富と権力を抜きには理解できません。


物語 イスラエルの歴史 -高橋正男 著|新書|中央公論新社


このように、帝国主義から進化したポスト・コロニアリズムを理解することが現代のグローバル資本主義の弊害と政治的対立を理解する鍵といえるのではないかと思います。 From Imperialism to Postcolonialism: Key Concepts

An introduction to the histories of imperialism and the writings of those who grappled with its oppressions and legacies in the twentieth century.


こうした点を踏まえて、この書籍を読めば、現代社会の課題とその解決の糸口を掴むことができるかもしれません。関心のある方は、以下のPodcastで新著「奴隷制、資本主義と産業革命」に関する著者の講義が聞けます。


Slavery, Capitalism and the Industrial Revolution, Episode 34


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