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  • 執筆者の写真Dr. K. Shibata

4/26(木)朝英語の会梅田のテーマ:女性と相撲―「伝統」の定義

更新日:2019年7月2日



4/26(木)の朝英語の会梅田は「女性と相撲」の問題で問われる「伝統」の「定義」または「言説―Discourse」について議論します。

仏語discours(ディスクール〈英語のdiscourseに相当〉)の訳語にあたる「言説」は、まだ日本人に馴染みの薄い定義ですが、欧米の社会科学の分野では「Power-権力」を論じるにあたって非常に重要な概念となっていますので、ここで取り上げたいと思います。

言説という概念はフランスの著名な哲学者であるPaul-Michel Foucault (1926 – 1984)によって広く知られるようになった概念です。非常に複雑な概念ですが、簡単に言ってしまうと、ある「言葉」を誰がどのように「定義」しているかを見ることで、その言葉を利用する、そしてされる人々の力関係が決まる、といったことです。

この最も分かりやすい例が、プロバガンダと呼ばれているものです。例えばイスラム過激派のテロ集団は、様々なテロ活動を「ジハード=聖戦」と呼んで正当化してきました。被害者にとっては憎むべき卑劣な犯罪も、「聖戦」という言葉により、この「戦い」は過去の欧米の帝国主義による植民地支配の怨念を晴らすものだという高貴なものに浄化されます。日本やドイツのファシズムもこの言説の利用無くしては成立しませんでした。

そして、何故、この「言説と伝統」が問題になるかというと、多くの場合「伝統」は「歴史的に認められた守るべき文化遺産である」という定義が関係者=Stakeholderの間で広く共有され、それ故にその「伝統」が守られ続け、その伝統を利用する立場にある者の権力を強化する歴史があったからです。その最たるものが「王家」「王制」であり、王は神の使者として、その権力を誇示し、一般民衆を支配してきました。

現代においても「伝統」という言葉が広く他者を支配する手段として利用されてきたという主張をしているのが、「The Invention of Tradition」の著者、Eric Hobsbawmです。Hobsbawmはこの「伝統の定義」に疑義を示し、我々が伝統として信じているものの多くは比較的歴史が浅く、実際は時の権力者の都合の良い様に新たに「創作された伝統」であることが多々あると著書のなかで論じています。

先日、相撲の土俵内で救急救命中の女性が土俵から出るように促されたことが、大きな事件として取り上げられました。日本相撲協会が土俵内における女性排除の「伝統の重要性」を論ずる一方、多くの人々が実はかなり近年まで「女性力士」が存在したことを取り上げ、土俵内の女人禁制の「伝統の正当性」を厳しく批判しています。

このように「言葉の定義」というものは様々な角度から検証される必要があります。「Discourse」による「Tradition」の再定義は我々のCritical Thinkingのスキルを鍛えるための絶好の教材であるといえます。皆さんの議論を期待しています。

当日利用する記事はこちら。

https://www.japantimes.co.jp/life/2018/04/16/language/lets-discuss-women-sumo/#.WtwylciFPIV

以下、議論の為の参考文献です。

The Guardian紙

https://www.theguardian.com/world/2018/apr/05/women-ordered-off-stage-at-sumo-contest-after-trying-to-help-stricken-mayor

ミシェル・フーコー

http://www.powercube.net/other-forms-of-power/foucault-power-is-everywhere/

知恵蔵の解説(コトバンクより抜粋)

「言説」とは文字通り「言葉で説くこと、説くその言葉」の意であるが、言語・文化・社会を論じる用語としての語義はそれとは大きく異なる。批評用語としての「言説」は、仏語discours(ディスクール〈英語のdiscourseに相当〉)の訳語として成立した。元来、「演説、スピーチ、発言、論」を意味したdiscourseには、1960年代以降、ミシェル・フーコーの言う「特定の社会的・文化的な集団・諸関係に強く結びつき、それによって規定される、言語表現、ものの言い方」の含意が加えられた。それを受けて、今日「言説」(discours)は、ある「もの言い」の文化的、社会的文脈の意で使われることが多い。(井上健 東京大学大学院総合文化研究科教授 / 2007年)


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